自動車が無かった時代・・・人は荷物をどうやって運んだんでしょう??

時代劇を見てみると――ゴトン、ゴトトン――そう、「荷車」!

荷車屋は今でいうところの自動車屋だったようです。

今回ご紹介する乾 芳雄さんは、江戸時代から続く荷車製造業「 乾 樫木工所 」の7代目。
彫刻屋台の車部分を製作する車師さんです。

それでは、乾さんの元へ、出発しんこーう!!!

着いたのは、ご自宅 兼 作業場。
ここが現在、鹿沼に残る唯一の車屋「乾 樫木工所」です。

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鹿沼生まれの乾さんは高校卒業後[E:pen]
2年ほど新潟県の三条市にて修行をした後に鹿沼へ戻り仕事に就き、
先代であるお父様の後を継ぎました[E:confident]
鹿沼の彫刻屋台においては、なんと
下横町以外はすべて[E:sign01]車か心棒を手掛けたことがあるそうで、
まさに乾さんあってこその現在の彫刻屋台なんですね[E:happy01]

[E:karaoke]後を継ごうと決心したのは何歳の頃ですか?

自然ーと。自分は長男だったから、自然と跡を継ぐものだと思ってた。
小刀とか使ってモノを作るのは子どもの時から好きだったね。

先代からは詳しく手ほどきを受けたわけでなくて、「見て覚えろ」って感じ。
正式に継いだのは平成になったころ・・・24~5年前だっけな、それくらい。

[E:karaoke]先代でもあるお父様との思い出を教えてください。

うーん、そりゃぁ、いっぱいあるね・・・
みんなそうだと思うけど、頑固一徹の職人だったね。

昔、あるとこが自分とこと他の業者とで見積もりとって他の業者の方に依頼したんだけど、出来上がっても結局動かなくて自分のとこに頼みに来てね。
でも、親父は頑として請けなくって。
どんなに頼まれても断り続けるもんだから、気の毒に思って代わりに自分が直してあげたことがあった。

まあ、職人ってのはそういうもんだよ。
「やらない」って言ったらやらない。仕事がなくても、やらねぇんだな。

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[E:karaoke]職人とはなんたるかを、乾さんはお父様の背中を見て学んでいったんですね[E:confident]

乾さんのお仕事は車師さんとお伺いしていましたが・・・
こちらは、名前が樫木工所となっていますよね??

ああ、樫の木をノミやカンナで加工する仕事なの。
だから車以外のものも作るよ。

[E:karaoke]たとえば・・・?[E:smile]

鬼怒川のライン下りの櫂も作ってるよ。

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見本が来るから、それを見ながらやって納める。
いちいち測ったりはしないよ、時間ばっかかかってしょうがないもの。
手でなでていれば大体分かるから。あとは勘で削るね。

[E:karaoke]これ・・・随分、ながーいんですね・・・[E:impact]

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こういったものも取り扱いながら、山車や屋台の滑車も手掛けているということなんですね[E:coldsweats02]

元々は荷車を作ってたんだよね。

【↓壁にかけられた荷車の模型】
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荷車っていうのものは、アメリカの幌馬車だとかみたいに世界中どこにでもあるんだよ。
みーんな、その地区の一番堅い木で作ってある。
日本で一番堅い木が樫。
だから屋台の車も、一番堅い木で作るんだよ。

[E:karaoke]堅い木だから「樫」[E:sign03][E:happy02]なるほど~[E:sign01]意外と気づかないものですね[E:happy01][E:sweat01]

乾さんには県内はもちろん、県外からも仕事の依頼が来ます[E:loveletter]
関東近郊はもちろん、先日は青森まで行ったとか。

自分が知ってる限りだと、今は屋台の車作ってるのは日本で8軒しかないらしいな。
彫刻や大工さんはいっぱいいるけど、車造ってる人はあんまりいないね。

[E:karaoke]お弟子さんは取ってらっしゃらないんですか?[E:catface]

最近になって、このまま技術を途絶えさせるのも勿体無いかなぁ、とは思い始めて。
一応、募集中(笑)
でもなかなか来ないからね。優秀な弟子がほしいけどもね。
まあ、逆にあんまりいっぱい来ちゃっても困っちゃうんだけど(笑)
ただ、仕事が一定してないし、毎年あるときとないときがある。
好きじゃなきゃ出来ないよ。そういった意味では広く募集しにくい。

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ただね、屋台は北海道から九州まである。
日本全国で1万5000~7000台。栃木だけでも300台。
仮に、車の技術を覚えれば、一生のうちに50ヶ所くらいやらせてもらえれば一生が終わっちゃう。
技術さえ覚えれば仕事がないってことはないと思うよ。

まあ、どんどんお客さんが遠くなっちゃうんだけどね。
ほら、長持ちする良い車を作れば作るほど、しばらく その場所での仕事はなくなっちゃうでしょ?だから。
それが大変かもしれないな(笑)

[E:karaoke]乾さんはわざわざ他県にも出向かれるとのことですが、お仕事はどのように依頼されるんでしょう?

営業はあまりこちらからはしないで、大体がツテとか紹介だったり。
あとは商工会議所のホームページからメールで依頼が来たりFAXだったり。

修理の場合なら、昔の(伝わるまま)再現をして
あとは基本的に請けるときは、外径(車の直径)だけを聞いてそれ以外は自分に任せてもらうようにしてるよ。

俺はね、紹介する人が「余計なことは言わず、あの職人に(全面的に任せて)気持ちよく作ってもらえ」っていってもらえるような、そんな職人になれたら一流、最高だと思ってんだ。
なかなかそんなこと言う人はいないけどもね(笑)

自称・名人とかもいるけど、そういったこたぁ問題じゃぁない。
世の中は自分のやった仕事を他の人が見て、「これなら自分はかなわない」とか思ってくれるもんなんだ。

[E:karaoke]確かに[E:catface]実際に皆さん、乾さんの作った車を見たり噂を聞きつけたりでご依頼されていますものね[E:wink]

ではそんな乾さんの作る車をさっそく見てみたいんですが、現在は新しい車でなく、古い車の修理中ということで・・・[E:dash]
これを見ながら、車について教えてください[E:sign03]

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この車は江戸時代に造られたやつで、スポーク(放射線状に広がっている部分)がダメになっちゃったからそれの修理をしてんの。
入れ替えてね。

さっきも言ったように、車ってのは世界各国にあるけれども、自分がやる車はこれ「御所車」っていうやつで
日本にしかない技術みたいだね。

[E:karaoke]そうなんですか[E:sign02][E:coldsweats02]

3年くらい前に、ドイツ人がわざわざ見に来たよ。
「ドイツには、こういう車を作れる人が居ない」って。
「組むところを見せてくれるならまた来る」って言ったんだけどね、断っちゃった(笑)

[E:karaoke]海外の方から見ても興味深い作りなんですね。
基本の造り方っていうものはあるんですか?

その家(会社)での流れだよ。
だから他のところではどうやってるのか知らないねぇ。

[E:karaoke]代々、受け継がれた秘伝の技なわけですね・・・[E:happy02]
これ は、部品はどうなっているんですか?

まず、この真ん中のやつ(円柱形の部品)ね。
この周りに四角く穴が開いていて、スポーク(=角材部分)が入ってる。

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中心の部分から外に向かって組み立ててく。

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スポークを何本かずつ(アーチ形の)板で繋いで、さらにそれを(大きな)板で繋いで・・・って作る。
みんな糊も釘も何にも使わないで組んでくんだよ。それで何tって重さに耐えられるの。

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(板状の)鉄は最後に巻くんだけど、巻くか巻かないかはお客さんの要望次第だね。
もちろん昔は鉄を巻かないものもあったから。

[E:karaoke]製作期間は・・・?

真ん中のに穴を空けるだけで、(屋台一台につける)車4つ分で1ヵ月半。
スポークは使うのは84本だけど、余分に用意しておくから100本作って・・・
屋台一台分の車を作るのに半年かかるから、1年で作れても最高二組くらいだな。

[E:karaoke]1年で二組[E:sign03][E:wobbly]

すべて手で仕上げてくんだよ。穴でも何でも。
手作業だから、毎日安定した仕事量がこなせるわけじゃない。
それに木の性質上、続けて作業ができなかったりもするから。

例えば今日みたいな雨の日は木が膨張しちゃうからな。
木を無理して組むのには向かない。
梅雨の時期には出来ないことがあったり、木を扱うって仕事は天候にも左右される。
屋台はそもそも、2~3月、9~10月しか組めないって決まってんだよ。

[E:karaoke]木を扱う仕事ってすごく繊細ですね・・・[E:eye]

他に、車を作るうえで、大変なことや難しいことは?

スポークと一番外の板の間に板があるけど、これが入っていなければ易しいんだよ。

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でも、この部品が入っていれば鉄を巻かなくても良いくらいなの。
入ってるから丈夫になって、鉄を巻かなくてもバラけないんだよ。

あとは、車ってのは形が丸(360度)だから、どうしても誤差が出ちゃうんで、それをどう逃げるか。
丸い形に、21本のスポーク(7枚の板でつなぐ)だと円は割り切れないでしょ。
そうするとどうしても誤差が出るから、その誤差ってのは、だいたい自分の勘で合わせる
18本のスポーク(6枚の板でつなぐ)のもあるよ。
これは割り切れちゃうから、難しいんだよねぇ。

[E:karaoke]割り切れたほうが難しいんですか?

割り切れると、ぴったりで作らなくちゃいけないから(むしろ)難しい。
(21本のは)よーく見ると(誤差の調整のために)スポークの間がそれぞれ違うよ。

[E:karaoke]良い車[E:shine]というのはどういうものを指すんでしょう?

中心の部品に対して、スポークが直角に立っていること。
まっすぐ立っていれば、車が回りやすくなるでしょ。
でもね、どうーしてもまっすぐ行かないもんなんだよ。
屋台は動くから、屋台が揺れにくい状態で車が回るのが一番理想

[E:karaoke]車の取り付けは、屋台の正面から見ると少しハの字っぽくなっているものがあるようなんですが・・・[E:eye]

そうした方が安定感が出るから。基本的に、全部ハの字になってるよ。
心棒(左右の車を繋ぐ棒)は屋台によって作りが外車だったり内車だったりするから、それによって長さが変わるね。

[E:karaoke]これが心棒ですね[E:downwardright]

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これを車の中心に通すんですか?

心棒に車を挿して、「詮」っていう部品で固定するの。

[E:karaoke]う~ん。ここまでお聞きしていると、本当に木だけで、無駄のない作りで出来ている車なんですが、、、
屋台って、重さが3tもあるって聞きましたよ[E:sign01][E:sweat01]
どうして、たった4つの車で3tもの重みに耐えられるんですか?[E:wobbly]
他に、何かもっともーっと、秘密があるんじゃ~~~?[E:gawk]

なぁに、理屈は簡単なんだよ。
(開けた)穴に対して、木をどれだけしっかり はめるか

[E:karaoke]???

普通の人は、穴があったら同じくらいまでのものしか はまらないと思うでしょ?

[E:karaoke]はい。たとえば5cm×5cmの穴だったら、5cm×5cmまでの木材しか はまらないと思います[E:dash]

でも、穴に対して それよりデカくして(少し大きいくらいのを)納めるんだよ。
それを、「木が しぬ」っつうの。木がへこむ。
そうすっと 中の木は縮められた分、(元に戻ろうと)広がろうとするから、(互いに押し合って)なかなか抜けないものが出来んの。

[E:karaoke]え、そんなことが出来るんですか[E:sign02]

その感覚っていうのは、。はめる時にたたく音。

――乾さんが実際に叩いて見せてくれました[E:sign03]

キン、キン・・・

ちょっと高めの音、ですね。
(オンエアで聴いた方もいらっしゃいますよね[E:note])

もう、これ以上 入らないって音があるんだよ。はまって一体になっている音が。
それが分からないとダメだね。
はまりきっていない時は、ほら。音が違うでしょ。

コンコンコン・・・

[E:karaoke]本当だ[E:coldsweats02]よーく聴いてみると先ほどのより少し、低くて軽めな音ですね。

自分が一回入れたやつは自分でも抜けない。
けども、素人が入れたやつは抜こうと思えば抜けちゃうの。


なんでかっていうと、普通の人が ある程度入ると「十分だ」と思う位置よりも、自分はもっと入れるから。
うんーときつくする。
でも、きつすぎると今度は ぶっつぁけっちゃう(木が裂けてしまう)。
だから、ぶっつぁける手前ぎりぎりまで嵌めこむわけ。
その感覚が分からないとだな。ぎりぎりまで入れて、「木が しぬ」って感覚が。

そういう理屈なわけだよ。理屈は簡単。ただ(木を深く)入れるだけだから。

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ただ、音が変わる時が分からなくちゃだね。
それが分かれば誰でも出来るよ。
緩いところでやめるか、ぎりぎりでやめるか。
でも、こんなのは口で教えても分かるもんじゃないんだよね。

[E:karaoke]言葉じゃなくて、経験で覚えていくしかないですものね[E:wobbly]

音も大事だけどね、木の線を見て、その木がどのくらい しぬのかも分かるんだよ。

[E:karaoke]えっ[E:impact]目でも分かるんですか[E:sign03]
乾さん・・・もしかして木の心が読めるんじゃ・・・[E:sign02][E:happy02]
そう思っちゃうくらい凄いです[E:sign01]

確かに、ある程度まで留めればもうこれ以上動かない(木が入らない)けど、もっと深くまでキツく入れた方が丈夫になって長持ちする。だから自分は深く入れるんだ。
重さに耐えられる丈夫さは、その理屈でしかないんだよ。

「単純な理屈。車は作ろうと思えば誰でも作れる」と乾さんは語りますが、
それを確かな形にする技術と経験は一夕一朝で身につけられるものじゃぁ、ないですよね[E:flair]
名匠の貫禄を感じます[E:punch][E:shine]

あとは、金づちを芯で叩けるかどうか
野球でいうと、バットの芯で当てればホームランになるけど、芯にあたらなければ外野フライになるでしょ。それだけの差が出るんだよ。

サイズもね、普通サイズの金づちじゃぁ、それだけの力しか出ない。
それじゃぁもうキツいのは入らない。
俺は組む時は、これで叩くんだよ。

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[E:karaoke]うわっ[E:sign01]・・・一般家庭にあるトンカチとは比べ物になりませんね[E:angry]
結構な大きさのハンマーですよ、これは・・・[E:sweat02]

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これならキツいのが入る。これを何度も打ちつけて入れる。
だから使っている金づちがどれくらいなのか聞いただけで、その人がどんな車を作るのかだいたい分かるね。

[E:karaoke]あのう、その金づち持ってみたいんですけど、いいですか??

いいよ。足に落とさねえように気を付けてね(笑)

と、乾さんから金づちを受け取ると・・・

[E:karaoke]おもっっっ[E:sign03]重い[E:sign01][E:crying]
こんな重いものを何度も振り上げてるんですか[E:sign02]
これ、肩痛くなりませんか??[E:weep]

まぁ~、痛くはなるわなぁ(笑)

[E:karaoke]乾さん、60代とは思えぬ逞しさです[E:rock][E:impact]

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[E:karaoke]そこまでして「丈夫な車を」と、車造りと真摯に向かい合っているのはどうしてですか?

車ってのは、納めて何年持つかが重要だから。

頼む側にとっては誰が作っても同じだし、安く作れるならその方が良いからって、より安い見積もりする業者を選ぶんだろうけど、その結果っていうのは10年くらい経った頃に出てくる

実際、4年経っても何の不具合も出ない車もあれば、たった4年ですでにもうガタガタな車もある。
形だけなら誰でも出来るから完成直後は分からないよ?
だけど、およそ3tもの屋台を乗せて動かしてどれだけもつか。
結果は数年後に大きく分かれるね。

そもそも車なんてのはさ、だーれも見ないわけだ。
お祭りで屋台が目の前に来ても、みんな彫刻とか上にばっか目がいって車に関心持つ人なんてそうそういないよ。
10人居たら、きっと10人とも見ない。

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でも、屋台は車が無いと動かないんだよ。
半年とか、どんーなに時間をかけてお祭りの準備をしてても、車が壊れたらお祭りそのものが出来なくなっちゃう。
それじゃあー、気の毒だ。
良いの作ってやらなきゃ、かわいそうだろ。

だから尚更「ちゃんと長持ちする より良い車を作ってやりたい」って、そう思うんだよ。

[E:karaoke]車は、みんなの想いを乗せて走るんですね[E:confident]
ところで乾さんの造った車は・・・何年くらい持つものですか??

自分のは、この周りの鉄を(緩くなるたびに)1回1回巻きなおしすりゃぁ、
100年は持つだろうね。

[E:karaoke]ひゃ、ひゃ、ひゃくねん[E:sign03][E:sign02]

だからね、1回作ったやつは自分が生きているうちにはもう手をかけたくない
それくらい長持ちするものを作りたいって思ってる。

[E:karaoke]これが、車師としての乾さんのこだわりであり、誇りなんですね[E:smile]

さて、乾さんはこのたび車師として鹿沼の名匠に選定されましたが、そのご感想をお聞かせください。

自分がこの商売で食べてこれたのは今宮神社があったおかげだし、たまたま生まれてきた時代の風潮ってのもあったんだろうな。
たまたま、樫の木を扱っていて、屋台の車の仕事があった。
それがなかったら食っていけなかった。
今は、どこもやめちゃったけども、車を作る技術があったおかげでうちは残れたのかもな。

鹿沼の名匠に選定されたのは、こういう仕事と巡り合えた故だからね、感謝してる。
でも、鹿沼には他にも、埋もれた名匠ってのがいーっぱいいるんじゃないなかな。

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[E:karaoke]そうですね。また次回以降の「鹿沼の名匠」選定発表も楽しみです[E:heart04]
ところで、乾さんは今後、鹿沼のお祭りがどんな風になっていってほしいと考えていますか?

鹿沼の祭りが国の文化財指定になって、祭り自体は京都・飛騨高山・秩父といった全国で有名な祭りと同じグループになったわけだ。
これからはその有名な祭りたちに早く近づけばいいって思ってる。
今はまだまだ鹿沼の知名度が低いから、もっと知られるようになればいいよね。

鹿沼で屋台の車が作られているということ自体を、全国で知っている人があまりいないから。
ぶっつけが有名になることで「鹿沼にこんなに彫刻屋台があるのなら、車師もいるはずだ」って市役所や商工会議所に問い合わせが来るようになるのを期待してます。
まずは、知ってもらいたい。

[E:karaoke]きっと全国に、すごい車を作れる乾さんのような職人を探している方は大勢いると思います[E:up]
鹿沼が有名になると、きっとそういう出会いが もっともっと増えていきますよね[E:note]
アイラブかぬま部員も、そのお手伝いがちょこっとでも出来てたらいいなぁ・・・[E:catface]

こんなこと言うと、怒られちゃうんだけどもね、
昔、皇室の結婚式で使う練習用の馬車の修理を頼まれたことがあるんだよ。
まあ、つまらない理由で断っちゃったんだけども、「天皇陛下の仕事を断る人はいない」って言われたよ(笑)
それは有名な浅草の老舗の商店さんから依頼されてね、そんな超一流会社に頼まれるくらいなんだから、俺の腕は良いのかもしれねぇよ?(笑)

おどけて話す乾さんですが、実際、乾さんはプロにも認められる超一流車師に違いありません[E:scissors][E:shine]

[E:karaoke]そんな乾さんの将来の目標をお伺いできますか?

年齢が年齢だから、今はないかなぁ。
若いころは、京都のでっっかい葵祭の車を作るのが夢だったんだよ。
あれは直径2mもある。だけれど、あれはもうできない。
なんでかって言うと、今から材料を買ってもそれを乾燥させるのに10年かかる。
10年後にはきっと自分の体が参っちゃうから。だからもうできない。

日本の祭りじゃぁ、京都の葵祭が“一番”なんだ。
その一番の屋台の車を作れば最高。
みんなそうでしょ。商売をやっている人はみんな上を狙ってる。
でもある程度、条件が伴わないとそれは出来ない。

野球の選手だって日本の一番で物足りないからアメリカに行くだろ。
屋台なら葵祭が一番。
なんといっても京都の先頭を走る屋台だからな。
どんな屋台が良いといっても日本であれにかなうものはないと俺は思ってんだ。
だからその車を作れば最高。生きていく内で。

なんだって希望は1番を目指す。
なれるなれないは別としても。
希望がなくちゃやってらんないよ。

だから、自分は屋台の車を作って、「誰にも負けない屋台を作ろう」って気持ちで作ってんだ。

[E:karaoke]じゃあ、鹿沼の彫刻屋台が有名になって、憧れの葵祭の屋台に近づいてくれれば・・・

ああ、最高だ!

――さて、お話をお伺いした作業場には、至るところに木材が置かれています。
というのも・・・

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丸太を買っても、(乾燥させる為に)10年経たなければ使えないんだよ。
丸太を板に引いて乾かすのに10年もかかる。
それを作業場においておく。そっから加工が始まる。

いつどんな風に加工されるのか売れるのか売れないのか分からないけど、材料とっとくの。
そんなだからこんな商売やる人いないよ(笑)
しかも儲からないもの、そんなに。

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[E:karaoke]そう言って、帰り際に奥から出してきてくれたのは

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これね、何かの部品で納めたやつ。

[E:karaoke]先がものすごく尖がっています!
・・・これ、機械でやったんですか?

いやいや、手でやるんだよ。

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[E:karaoke]手でこんなに鋭く、しかも正確に出来るんですか!
トンガリと曲線のフォルムが美しい。
いいなぁ、オブジェになりそう。
スカイツリーに似てますね(笑)

これ、あげるよ[E:happy01]

[E:karaoke]ほんとですかー[E:sign02][E:happy02]では、乾さんとの出逢いの記念に、
アイラブかぬま部の部室に飾らせていただきますっ[E:lovely]

乾さんは車を造るだけでなく、
その手で樫の木を自在に加工してたくさんの人や物を支えてるんですね[E:shine]
[E:karaoke]これまで造った車に対する想いはありますか?

車を造ってるけども、納めたらあとは向こうの自由。
丁寧に扱ってほしいけども、どう使おうが買った人次第だからね。

でも、やっぱり大事には扱ってほしいな。
車を雑巾で拭いてくれるとか、そんなもんでいい。
ただでさえ車に関心を向けることはあまりないからね、雑な扱いになりやすいものだよ。
でも、車がないと、屋台は成り立たないんだ。

お祭りで屋台を、そこに乗る人や想いを、「支え」「運んで」くれる車。
今度見かけたら、こっそり車に向かって [E:shine]おつかれさま[E:shine] と言ってあげたいです[E:confident]

これから100年の後、鹿沼の ぶっつけ秋祭りが全国でも有数の、今よりさらに大きな祭りとなって
乾さんの技術を継いだ車師さんが、乾さんの作った車を直して・・・
そんな未来が、あったらいいなぁと 乾さんのお話を聞いて・・・感じました。

実は乾さん、いせひでこさん著の絵本のモデルにもなっています。

【いせひでこさんとの記念のお写真】
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中も、ちょっと見せていただきまし たよー。
(↓ぶっつけ秋祭りがモチーフとなった『まつり』より)

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これを見て、将来 車師を夢見る ちびっ子も、いるんじゃないかなぁ[E:smile]

目立たないけど、車がなくちゃ祭り自体が始まらない。
みんなの笑顔が曇ってしまわないように・・・
乾さんは今日も丹精込めて、世紀をまたぐ車を造っています。

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乾 樫木工所

[E:house] 鹿沼市上材木町1779
[E:telephone] [E:faxto] 0289-62-5553

木のまち・鹿沼工師の会
[E:pc]http://www.kanumacci.org/index.php/home


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